千葉銀行グループのちばぎんコンピューターサービスが、AIを使った開発の仕組みで、VB.NETシステムの移行工数を新規開発時に12.5人月から2.0人月へ削減した。約8割の圧縮であり、古い基幹システムの更新を抱える企業にとって、開発コストの考え方を見直す材料になる。
何が起きたか
ちばぎんコンピューターサービスは、AI駆動開発の仕組みを構築し、既存のVB.NETシステムを刷新する際の工数を大幅に減らしたと発表した。数値は2種類示されている。新規システム開発時は12.5人月から2.0人月へ(81.6%削減)、既存システムの革新化時は4.0人月から1.5人月へ(57.8%削減)である。
仕組みの中核は、AI自動コーディングエージェント「Devin」と、開発ドキュメントを参照できる生成AI応用システム「C-chatSupport」の組み合わせだ。新規開発ではDevinがVB.NETのコードを自動生成し、C-chatSupportが開発ドキュメントの参照機能を担う。既存システムの刷新では、ライブラリなどの作業を単純な変換作業に簡素化したうえで、ソースコードの変換をDevinに委ね、その後の検証をC-chatSupportで実施するという流れになっている。
出典: @IT(アイティメディア)
中堅企業への含意
この事例が示すのは、AIによる工数削減が「ゼロから新しいものを作る」場面だけでなく、すでに動いている古いシステムを置き換える場面でも効く、という点だ。VB.NETのようなレガシー技術で組まれた在庫管理や受発注の仕組みを今も使い続けている、従業員50〜300名規模の企業は少なくない。担当した技術者が退職し、中身を理解できる人がいないまま放置されているケースもある。
注目したいのは、AIに任せる前の「単純な変換作業への簡素化」という工程だ。AIが力を発揮したのは、人が作業を整理し、変換のルールを決め、結果を検証する枠組みを先に用意したからである。AIに丸ごと投げれば自動で終わる、という話ではない。業務の流れを言語化し、AIが扱える形に分解する設計力が、削減幅を左右する。
もう一つの含意は、外注一択ではない選択肢が生まれつつあることだ。レガシー刷新を外部に発注すると、規模によっては相応のコストがかかり、着手をためらう要因になりやすい。社内に開発リソースが限られる中堅企業でも、AIエージェントを使えば、これまで手が出せなかった刷新に着手できる可能性がある。
今すぐできること
自社で同じ成果を狙うなら、いきなりツール導入から入らず、現状の棚卸しから始めたい。具体的には次の3点が出発点になる。
- 移行対象の特定:どのシステムが古い技術で動き、誰がメンテナンスしているかを書き出す。属人化している領域ほど刷新の優先度が高い。
- 仕様の言語化:現行システムが何をしているかを文書化する。AIに任せる前提として、この情報が整っているほど変換の精度が上がる。
- 小さく試す:全社一括ではなく、影響範囲の狭い一機能から検証する。今回の事例でも、工数の削減効果は変換工程の整理とセットで生まれている。
レガシー刷新は「いつかやらねば」と先送りされがちな課題だが、技術者がいなくなってからでは選択肢が狭まる。AIが使える今のうちに、自社のどこから手を付けるかを描いておくことが、後の負担を軽くする。
自社のレガシーシステムをどう刷新すべきか、何から着手すべきか迷っている方へ。現状の棚卸しと優先順位づけの考え方を、第三者の視点で整理します。
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