ソニーグループの経理部門が、約2年間で150件を超えるDXプロジェクトを推進し、1年分以上の業務時間を削減した。正確性と継続性が最優先される経理は変革が難しい領域とされてきたが、同社は「まず試してみる」文化を起点に成果を積み上げた。ここに、従業員50〜300名の中堅企業が経理DXを進めるためのヒントがある。
何が起きたか
ITmediaの報道によると、ソニーグループの経理部門は約2年間で150件を超えるDXプロジェクトを実施し、累積で1年分以上にあたる業務時間を削減した。同社のグローバル経理事業センターには200人を超えるメンバーが在籍し、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は2016年から導入を始めている。
特徴的なのは、現場任せでも号令一下でもない進め方だ。「DX推進層」と「人材育成層」の二層構造を設け、システム技術者やエンジニア、業務プロセス改善の専門家など、背景の異なる人材を意図的に交ぜた。多様なメンバーが交わることで、想定していなかった課題解決が生まれるという考え方である。
中堅企業への含意
注目すべきは、ソニーが大規模な一括導入ではなく、小さな試行を150件以上重ねた点だ。1件あたりに換算すれば、決して大それた施策ばかりではない。請求書の転記、月次の集計、入金消込といった反復作業を一つずつ自動化していった積み重ねが、1年分を超える時間削減につながった。
従業員50〜300名の企業でも、構造は同じだ。経理担当が3〜5名規模なら、繁忙期の残業や属人化した処理が必ず存在する。ここで「全社一斉に新システムへ移行する」と考えると、現場の抵抗と頓挫を招きやすい。代わりに、誰か一人が一つの作業を試しに自動化してみるところから始めれば、失敗しても損失は小さく、成功すれば横展開できる。
もう一つの示唆は、人の組み合わせだ。経理の知識を持つ人と、ツールを触れる人を同じテーブルに座らせる。中堅企業に専任のエンジニアがいなくても、現場の担当者と外部の知見を組み合わせれば、二層体制の縮小版は再現できる。
今すぐできること
最初の一歩として、自社の経理・総務部門でこの3点を確認したい。
- 反復作業の棚卸し:毎月・毎週、同じ手順で繰り返している作業を書き出す。時間がかかる順に並べる。
- 一つだけ試す:最も時間を食っている作業を一つ選び、テンプレート化や自動化を小さく試してみる。全社展開は後回しでよい。
- 試した結果を共有する:うまくいった工夫を部署内で見える化し、次の作業へ広げる土台をつくる。
正確性が求められる経理だからこそ、いきなり大きく変えるのではなく、検証しながら小さく進める文化が効く。1年分の時間削減も、最初の1件から始まっている。
自社の経理・総務でどの作業から効率化できるか、現状を一緒に整理してみませんか。
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