「事務代行に頼みたいけれど、何をどこまで任せられて、いくらかかるのか分からない」。この記事は、その2つの疑問に最初に答えます。対応業務の範囲、料金がどう決まるか、依頼を始めてから定着するまでの進め方を、従業員30〜300名の会社を想定して具体的に整理しました。
事務代行で任せられる業務の範囲を、まず見極める
事務代行を検討するとき、最初にやるべきは業者選びではありません。「自社の事務のうち、どれが外に出せる業務か」を切り分けることです。ここが曖昧なまま見積もりを取ると、料金の比較ができず、結局決められません。
事務作業は、判断の重さで3つに分けられます。定型作業(手順が決まっていて誰がやっても結果が同じ)、準定型作業(判断は要るがルール化できる)、非定型作業(その場の経営判断が必要)の3つです。事務代行に向くのは前者2つで、非定型は社内に残します。
外に出しやすい定型・準定型の例
- 経理・バックオフィス:請求書チェック、入金消込、経費精算、月次締めの補助、仕訳チェック、給与計算の補助
- 営業事務・インサイドセールス:リード整理、フォロー漏れの検知、面談設定、顧客情報の管理、提案書のたたき作成
- 総務・社内業務:議事録作成、社内資料の作成、マニュアル整備、FAQの整理、データ入力と整理
- 集客・情報発信:問い合わせ対応の一次受け、SNS投稿、月次レポートの作成
社内に残すべき非定型の例
値引きの最終判断、与信や取引可否の決定、人事評価、クレームの最終回答などは、会社の意思そのものです。これらを外に出すと、かえって確認の往復が増えて遅くなります。事務代行に出すのは「手は動かすが判断は社内が握る」業務、と覚えておくと切り分けがぶれません。
業務を書き出すときは、「月に何時間かけているか」も一緒に記録します。工数が大きく、かつ判断が軽い業務ほど、外注の費用対効果が高くなります。
費用相場と料金体系の内訳
事務代行の費用相場は、おおむね月10万〜50万円です。ただしこの幅は「業務の種類」と「料金体系」で大きく動くため、相場の数字だけを見ても自社の費用は読めません。料金がどう決まるのかを内訳で理解しておきます。
料金体系は大きく3タイプ
従量型(時間・件数あたり)は、稼働時間や処理件数に応じて課金されます。月の業務量が読めない、あるいは少ない会社に向きますが、忙しい月は青天井になりやすい点に注意が必要です。時間単価はおおむね1,500〜3,000円が一つの目安です。
固定型(月額パッケージ)は、決めた業務範囲を月いくらで請け負う形です。毎月の支払いが読めるため予算管理がしやすく、業務量が安定している会社に向きます。一方、契約範囲を超える依頼は追加費用になりやすいので、範囲の線引きを契約時に明文化しておきます。
成果連動・複合型は、固定の月額に成果や追加業務の従量を組み合わせる形です。複数業務をまとめて任せるときに使われます。
同じ「月30万円」でも中身が違う
料金を比較するときは、月額の数字ではなく「その金額で何業務・何時間まで対応するか」を必ず確認します。たとえば同じ月30万円でも、経理1業務だけのところと、経理・集客・営業の複数業務を横断で対応するところがあります。後者の方が単位あたりは割安です。
参考に、homeの場合は月額30万円から複数業務を横断して実行する形を取っています(対応業務は経理・集客・営業など計24業務の中から選択)。1業務だけでなく、関連する事務をまとめて任せたい会社向けの設計です。
正社員を1人雇う場合との比較
事務代行の費用が高いか安いかは、単体では判断できません。比較対象は「事務担当を1人採用した場合」です。正社員1人の年間コストは、給与だけでなく社会保険・採用費・教育費・福利厚生を含めると960万〜1,200万円になります。月割りで80万〜100万円です。
| 比較項目 | 事務担当を採用 | 事務代行 |
|---|---|---|
| 月額の目安 | 80〜100万円 | 10〜50万円 |
| 稼働開始まで | 採用2〜4か月+教育3〜6か月 | 最短数営業日〜2週間 |
| 退職・引き継ぎ | 辞めると手順が振り出しに戻る | 担当が変わっても業務は継続 |
| 業務量の増減 | 繁忙期は不足・閑散期は余る | 範囲内で調整しやすい |
採用には「雇う→教育する→戦力になる→辞める→また採用する」というループがあり、ここに毎月の人件費が乗り続けます。事務代行は、このループから手順とノウハウを切り離せる点に費用以上の意味があります。
丸投げか、部分依頼か。任せ方の2パターン
事務代行には、業務まるごとを任せる「包括型」と、工程の一部だけを切り出す「部分依頼型」の2つの任せ方があります。どちらが正解ということはなく、社内の状況で選びます。
| 観点 | 包括型(まとめて任せる) | 部分依頼型(一部を切り出す) |
|---|---|---|
| 向くケース | 担当者が不在・退職、業務そのものが回っていない | 担当はいるが一部の作業に手が回らない |
| 社内の手間 | 初期の引き継ぎ後は確認のみ | 切り出した工程の指示が都度必要 |
| 注意点 | 業務がブラックボックス化しないようレポートで可視化する | 工程の前後で社内とのつなぎが発生する |
判断の軸はシンプルです。「その業務を社内で説明できる人がいるか」。説明できる人が残るなら部分依頼から始め、説明できる人すらいない(退職などで)なら、最初から包括型で任せた方が早く落ち着きます。
依頼を始めてから定着するまでの進め方
事務代行は、契約したその日からうまく回るわけではありません。引き継ぎと検証の期間が必ず要ります。失敗を避けるため、いきなり全業務を渡さず、段階的に広げます。
ステップ1:業務の棚卸しと候補の選定
前述の切り分けで書き出した業務のうち、「工数が大きく・判断が軽く・手順が安定している」ものを最初の1〜2業務として選びます。月次締めや請求書チェックのような、毎月必ず発生する定型業務が候補になりやすいです。
ステップ2:小さく試して数字で確認する
1業務だけを1か月ほど任せ、効果を数字で見ます。見るべきは処理時間の短縮率・差し戻し(エラー)率・残業時間の変化の3点です。印象ではなく数字で判断することで、本格的に広げてよいかが見えます。試用や短期契約の枠があるかは、業者選びの確認事項に入れておきます。
参考に、homeでは月額30万円・1か月単位で1〜3業務を試せるトライアルの枠があり、効果を見てから継続を判断できます。
ステップ3:成果の出た業務から範囲を広げる
最初の業務で数字が出たら、関連する業務を順に追加します。経理から始めたなら経費精算や給与計算の補助へ、というように隣接業務へ広げると、引き継ぎコストを抑えられます。一般的には数か月で3〜4業務まで広げる会社が多く見られます。
ステップ4:レポートで運用を見える化する
業務を外に出すと、社内から進捗が見えなくなりがちです。月次のレポートで「何を・どれだけ処理したか」「どこで詰まったか」を可視化できる体制かどうかを、契約前に確認しておきます。これが包括型でブラックボックス化を防ぐ鍵になります。
契約前に確認すべきこと(情報の取り扱い)
事務代行では、請求情報・顧客名簿・給与データなど、社外に出したくない情報を渡すことになります。だからこそ、安さより先に情報の取り扱いを確認します。
- 秘密保持契約(NDA)を業務開始前に締結できるか
- 担当者ごとにアクセス権限を絞れるか(必要な情報だけを見せる設計か)
- データの保管場所と暗号化、退去時のデータ返却・削除の取り扱い
- 担当者が変わったときの引き継ぎ手順が決まっているか
ここを口頭の「大丈夫です」で済ませず、契約書と運用ルールで確認できるかが、信頼できる相手かどうかの分かれ目です。
事務代行でよくある失敗と、その回避
うまくいかない事例には共通のパターンがあります。先に知っておけば、ほとんどは避けられます。
失敗1:丸投げして社内に手順が残らない
すべてを任せきった結果、業務の中身を社内の誰も把握していない状態になることがあります。担当の交代時に立ち往生します。レポートで可視化し、手順書を社内にも残しておくことで防げます。
失敗2:判断が要る業務まで渡してしまう
値引き判断や与信のような非定型業務を渡すと、確認のやり取りが増えてかえって遅くなります。切り分けの段階で「判断は社内」と線を引いておきます。
失敗3:相場の安さだけで選ぶ
時間単価の安さに引かれて選ぶと、対応範囲が狭く追加費用がかさみ、結局割高になることがあります。月額ではなく「その金額で何業務・何時間まで」で比較します。
失敗4:いきなり全業務を渡す
引き継ぎが追いつかず初月で混乱する、という典型です。小さく試して数字を見るステップを飛ばさないことが、結果的にいちばん早道です。
ここまでの内容を、あわせてバックオフィス全体の整理に役立てたい方は、こちらも参考になります。
よくある質問
Q. 事務代行の費用相場はいくらですか?
A. おおむね月10万〜50万円です。従量型は時間単価1,500〜3,000円が目安、固定型は業務範囲を決めた月額制です。月額の数字より「その金額で何業務・何時間まで対応するか」で比較してください。
Q. どんな業務まで任せられますか?
A. 手順が決まった定型・準定型業務(請求書チェック、入金消込、データ入力、議事録作成など)が中心です。値引き判断や与信のような経営判断は社内に残すのが基本です。
Q. 今使っている会計ソフトや顧客管理ツールはそのまま使えますか?
A. 多くの場合そのまま使えます。データ入力・照合・集計を代行する形で対応するため、システムの入れ替えは原則不要です。アクセス権限を絞って渡す運用にすると安全です。
Q. まず何から始めればよいですか?
A. 月に最も時間がかかっている定型業務を1つ選び、小さく試して数字を確認するのがおすすめです。どの業務から切り出すかは、30分の無料相談で一緒に整理できます。
まとめ:迷ったときの判断基準
事務代行は、料金の安さで選ぶものではなく、「どの業務を・どこまで・どう任せるか」を決めてから選ぶものです。最後に判断の軸を整理します。
- 切り分け:手は動かすが判断は社内が握る業務だけを外に出す
- 比較の単位:月額の数字でなく「その金額で何業務・何時間まで」で見る
- 始め方:いきなり全部渡さず、1業務を小さく試して数字で判断する
- 情報管理:NDA・権限・データ取り扱いを契約書で確認してから渡す
事務担当を1人採用すると月80万〜100万円かかり、退職のたびに手順が振り出しに戻ります。そのループから手順とノウハウを切り離せるかどうかが、事務代行を入れる本当の価値です。
御社の事務のうち、どこから外に出せるか分からないという段階でも大丈夫です。最も時間がかかっている業務を一緒に切り分けるところから始められます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。料金や対応範囲は契約内容により異なります。
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