適応障害で離婚できる?3つの離婚への影響と慰謝料請求の方法を解説

適応障害で離婚できる?3つの離婚への影響と慰謝料請求の方法を解説 夫婦生活の悩み

「離婚のストレスで心も体も限界…これって適応障害なのかな?」
「この診断が、慰謝料や親権で不利に働いたらどうしよう…」

離婚という大きな問題と、ご自身の、あるいはパートナーの心身の不調が重なり、どう対処すればいいのか分からず、深い不安の中にいる方も多いでしょう。

その苦しい状況を乗り越えるためには、心の問題と法律の問題、両面からのアプローチが不可欠です。
まずはご自身の心身の状態を正しく把握し、その上で、それが離婚にどう影響するのか法的な知識を得ること。
その両輪で対処することが、後悔のない解決への唯一の道となります。

一人で抱え込み、結論を急ぐ必要はありません。
まずは正しい情報を手に入れ、ご自身の心と権利を守る準備を始めましょう。

この記事では、離婚と適応障害の問題で悩んでいる方に向けて、主に以下を専門家の視点でご説明します。

この記事でわかること
  • 適応障害の症状とうつ病との違い
  • 診断が慰謝料や親権に与える法的な影響
  • 当事者の状況に応じた具体的な対処法と支援

その辛さは、決してあなたの「甘え」や「弱さ」ではありません。
この記事が、複雑に絡み合った問題を整理し、心穏やかな日々を取り戻すための一助となれば幸いです。
ぜひ、参考にしてください。

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離婚による適応障害とは?うつ病との違いと主な症状

離婚という人生の大きな変化は、心に計り知れないほどの負担をかけ、時に「適応障害」という心身の不調を引き起こすことがあります。
これは決して特別なことではなく、大きなストレスに直面した際に誰にでも起こりうる、心と体からのサインなのです。
まずは、その正体を正しく知ることから始めましょう。

「最近、わけもなく涙が出るのは、ただ疲れているだけかな…」
「何もやる気が起きない。自分が弱いからいけないんだ」
そんな風に、ご自身を責めてしまっている方もいるかもしれません。
しかし、その不調はあなたのせいではなく、「適応障害」という名前のつく状態である可能性があります。
病気としての正しい知識を持つことが、自分を客観的に見つめ、回復への第一歩を踏み出す助けとなるはずです。

以下で、離婚をきっかけに起こりうる適応障害の基本的な知識、よく似たうつ病との違い、そしてご自身の状態を確認するための具体的な症状について、詳しく解説していきます。

明確なストレスが原因で発症する精神疾患

適応障害とは、その名の通り、ある特定の出来事や環境の変化にうまく「適応」できず、心や行動にさまざまな不調が現れる精神疾患です。
この病気の最も大きな特徴は、不調の原因となるストレス(専門用語で「ストレス因」といいます)が、はっきりと特定できる点にあります。

離婚の場面でいえば、以下のような出来事が直接的な引き金となり得ます。

  • パートナーとの絶え間ない口論や対立
  • 離婚協議や調停、裁判といった法的な手続きの進行
  • 離婚後の経済的な不安や、将来への悲観
  • 引っ越しによる住環境の変化や、人間関係の喪失

これら一つひとつが、心にとって非常に大きな負担となります。
その結果、以前は問題なくできていた仕事でミスが続いたり、家事に全く手がつかなくなったり、感情のコントロールが難しくなったりするのです。
これは、あなたの気力や能力が低下したわけではありません。
あまりに大きなストレスによって、心と体のバランスが一時的に崩れてしまっている状態だと理解してください。

うつ病との違いは「ストレス原因の明確さ」

適応障害は、気分の落ち込みや意欲の低下といった症状がうつ病とよく似ているため、混同されやすい病気です。
しかし、両者には決定的な違いがあります。
それは、不調の原因となっている「特定のストレス」との関連性が、どれだけ明確であるかという点です。

適応障害の場合、原因となっているストレス(例えば、離婚調停など)から物理的・心理的に距離を置くことができると、症状が和らぐ傾向にあります。
例えば、離婚問題で揉めている平日は気分が沈んで何も手につかないけれど、週末に実家に帰り、その問題から一時的に解放されると少し楽になる、といったケースです。

一方、うつ病の場合は、ストレスが発症のきっかけになることはあっても、一度発症すると、原因から離れても強い抑うつ気分や興味の喪失が一日中、ほぼ毎日続くことが多いとされています。
どこにいても、何をしていても、重苦しい気分から逃れられないのがうつ病の特徴です.

ただし、症状の現れ方には個人差があり、自己判断は非常に危険です。
また、適応障害が長引き、適切な治療を受けずにいると、うつ病に移行してしまうことも少なくありません。
正確な診断のためには、必ず専門医に相談することが重要です。

これは甘え?具体的な症状セルフチェックリスト10個

心身の不調を感じているとき、多くの人が「これは自分の甘えなのではないか」「もっと強くならなければ」と、自分自身を追い込んでしまいがちです。
しかし、適応障害で見られる症状は、決して「甘え」や「気合」の問題ではありません。
それは、あなたの心が助けを求めている、医学的に認められたサインなのです。

以下のリストを見て、ご自身の状態に当てはまるものがないか、客観的に確認してみてください。
もし複数の項目に心当たりがある場合は、一人で抱え込まず、専門家へ相談することを検討しましょう。

適応障害 セルフチェックリスト
ご自身の最近の状態を振り返り、当てはまる項目にチェックを入れてみてください。
これは医学的な診断に代わるものではなく、あくまでご自身の状態を客観的に把握するための目安です。

分類具体的な症状チェック
気持ちや
考え方の変化
(精神症状)
理由もなく悲しくなったり、涙もろくなったりする
何事に対しても興味や喜びを感じられない
常に不安で、緊張が解けない感じがする
将来に希望が持てず、絶望的な気持ちになる
ささいなことでイライラしたり、怒りっぽくなったりする
体や行動の変化
(身体・行動症状)
なかなか寝付けない、夜中に何度も目が覚める、または寝すぎてしまう
食欲が全くない、または過食してしまう
頭痛、腹痛、めまい、動悸など、原因がはっきりしない体の不調が続く
人に会うのがおっくうで、約束を断ることが増えた
仕事や家事、学業など、これまで出来ていた役割を果たせなくなる

【診断の目安】
上記の項目に複数当てはまる状態が続いている場合、それは「甘え」ではなく、心が助けを求めているサインかもしれません。一人で抱え込まず、心療内科や精神科、カウンセリングルームなどの専門機関に相談することをお勧めします。

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適応障害の診断が離婚協議に与える影響3つ

適応障害という診断は、単にあなたの心身の不調を示すだけでなく、離婚の話し合いを進める上で、法的に重要な意味を持つことがあります。
診断書があることで、あなたの苦しみが客観的な事実として認められ、それが自分を守り、正当な権利を主張するための助けとなる場合があるのです。

「病気のことを相手に知られたら、かえって不利になるんじゃないか…」
「診断書なんて、離婚の話し合いで本当に意味があるのだろうか」
そんな不安や疑問を感じるかもしれません。
確かに、診断が有利に働く場面と、逆に慎重な対応が求められる場面の両方が存在します。
だからこそ、その影響を正しく理解し、戦略的に離婚協議を進めることが何よりも重要になるのです。

以下で、適応障害の診断が、離婚の話し合いに与える具体的な3つの影響について詳しく解説します。

①医師の診断書が客観的な証拠になる

医師によって作成された「診断書」は、あなたの心身の不調が、単なる主観的な訴えや気の持ちようではなく、医学的に認められた客観的な事実であることを証明する、極めて強力な証拠となります。

離婚の話し合い、特に調停や裁判といった法的な場では、ご自身の主張を裏付ける客観的な証拠が非常に重視されます。
「相手の言動のせいで、夜も眠れず、何も手につかないほど辛い」と口頭で訴えるだけでは、相手から「大げさだ」「気のせいだ」と反論されてしまうかもしれません。
しかし、そこに医師の診断書があれば、あなたの苦しみがどれほど深刻なものであるかを、調停委員や裁判官に具体的に、かつ説得力をもって示すことができるのです。
診断書は、あなたの言葉に重みを与え、相手にもあなたの不調を真摯に受け止めさせるきっかけとなり得ます。

②慰謝料請求で有利になる場合と条件

適応障害と診断された事実が、慰謝料の請求において有利に働く可能性があります
ただし、それには重要な条件があります。
それは、適応障害を発症した原因が、相手の行為(不法行為)にあることを明確に証明できる場合です。

慰謝料とは、相手の暴力(DV)や暴言(モラハラ)、不貞行為などによって受けた精神的な苦痛に対する損害賠償です。
適応障害という診断は、精神的苦痛が具体的な「損害」として表れたことを示すものであり、その原因が相手にあるという因果関係を立証できれば、慰謝料が増額される大きな要因となり得ます。

  • 相手のモラハラが原因の場合
    日常的な暴言を記録した日記や録音データと、その時期に精神的な不調をきたして適応障害と診断されたことを示す診断書を組み合わせる。
  • 相手の不貞行為が原因の場合
    不貞の事実を証明する証拠(写真やメールなど)と、その事実を知った精神的ショックが原因で適応障害を発症した、という流れを診断書で示す。

単に「離婚のストレスで適応障害になった」というだけでは、慰謝料請求の根拠としては弱い場合があります。
「相手のどの行為が、あなたの心身にどのような影響を与えたか」という因果関係を、証拠に基づいて示すことが鍵となるでしょう。

③親権の判断で不利になる可能性と対応

適応障害の診断は、残念ながら、親権の判断において不利に働く可能性もゼロではありません
この点は、正直に理解しておく必要があります。
なぜなら、裁判所が親権者を決める際に最も重視するのは「子の福祉」、つまり、子どもの心身の健やかな成長にとってどちらの親と暮らすのがより良いか、という視点だからです。

そのため、親の精神状態が不安定で、子どもの養育に支障をきたす恐れがあると判断されてしまうと、親権の獲得が難しくなるケースも考えられます。
しかし、診断を受けたからといって、直ちに親権が取れなくなるわけでは決してありません。
重要なのは、病気と向き合い、子育てをする能力と環境が整っていることを具体的に示すことです。

  • 治療への積極的な姿勢
    定期的に通院し、医師の指示に従って治療に真剣に取り組んでいることを示す。主治医に「子育てに支障はない」という内容の意見書を書いてもらうのも有効です。
  • サポート体制の存在
    ご自身の両親や兄弟姉妹など、いざという時に子育てを手伝ってくれる協力者がいることを明確にしましょう。一人で抱え込んでいるわけではない、という事実は安心材料になります。

病気のことを隠すのではなく、きちんと治療し、子育てへの強い意欲と、それを支える具体的な環境があることを示すことが、相手や裁判所の懸念を払拭する鍵となります。

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あなたが適応障害になった場合の対処法と支援

離婚が原因で適応障害になった、あるいはその疑いがあると感じたとき、何よりも優先すべきは、あなた自身の心と体を休ませ、回復させることです。
一人で抱え込まず、利用できる医療、公的な制度、そして法律の専門家のサポートを積極的に活用しましょう。

「離婚のことで頭がいっぱいで、自分のことまでとても考えられない…」
「心も体もボロボロで、誰を頼ればいいのかすら分からない」
そんな風に、心身ともに疲れ果ててしまうのは当然のことです。
しかし、あなたが元気でなければ、離婚という大きな問題を乗り越えることも、その先の新しい人生を笑顔で歩み始めることもできません。
まずは自分自身を大切にすることが、結果的に問題解決への一番の近道となるのです。

以下で、心身の回復と離婚問題の解決を両立させていくための、具体的な対処法と支援について解説します。

まずは心療内科など専門家へ相談する

「最近眠れない」「食欲がない」「涙が止まらない」といった心身の不調を感じたら、自己判断で放置せず、できるだけ早く心療内科や精神科といった医療機関を受診してください
それが、回復への最も確実で、最も大切な第一歩です。

専門医による適切な診断を受けることで、自分の状態を客観的に理解でき、漠然とした不安が和らぎます。
また、症状を和らげるための薬を処方してもらったり、専門家である臨床心理士などによるカウンセリングを通じて、ストレスへの具体的な対処法を学んだりすることもできます。
病院に行くことに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、風邪をひいたら内科へ行くのと同じように、心が疲れたときにはその専門医に相談するのは、ごく自然なことです。
早期の受診が、症状の悪化を防ぎ、回復を早めることにつながります。

利用できる社会保障制度(傷病手当金など)

適応障害の治療のために仕事を休まなければならなくなった場合など、経済的な不安は心の回復の大きな妨げになります。
そのような場合に備え、私たちの生活を支えてくれる公的な社会保障制度があることを知っておいてください。

  • 傷病手当金
    あなたが会社の健康保険に加入している場合、病気やケガが原因で連続して3日間会社を休んだ後、4日目以降も仕事に就けない場合に、給与のおおよそ3分の2に相当する額が支給される制度です。医師による証明が必要となります。
  • 自立支援医療(精神通院医療)
    適応障害などの精神疾患で、継続して通院治療が必要な場合に、医療費の自己負担額が通常3割のところ1割に軽減される制度です。お住まいの市区町村の窓口で申請できます。
  • 障害年金
    症状が重く、長期間にわたって日常生活や仕事に著しい支障が出ている場合には、障害年金が支給される可能性もあります。申請のハードルは低くありませんが、選択肢の一つとして知っておく価値はあるでしょう。

これらの制度を利用することで、経済的な心配を少しでも和らげ、安心して治療に専念できる環境を整えることができます。

離婚問題に詳しい弁護士に相談し戦略を立てる

心の治療と並行して、離婚という法的な問題については、離婚問題に精通した弁護士に相談し、今後の戦略を立てることが非常に賢明な選択です。
心身のエネルギーが低下している状態で、複雑で多大なストレスを伴う離婚交渉を一人で進めるのは、あまりにも過酷といえるでしょう。

弁護士に代理人となってもらうことで、以下のような大きなメリットが得られます。

  • 相手との直接交渉や、裁判所との煩雑なやり取りをすべて任せられるため、精神的な負担から解放され、治療に専念できる。
  • 適応障害の診断書を、慰謝料請求でどのように活かすか、また親権問題で不利にならないようどう主張するか、といった専門的な戦略を立ててくれる。
  • あなたの心身の状態を考慮しながら、最適なタイミングで法的手続きを進めてくれる。

「心の問題は医師に、法律の問題は弁護士に」と、それぞれの専門家に役割分担をすることで、一人ですべてを背負い込む必要はなくなります。
専門家の力を上手に借りることが、心身の回復と問題解決の両方を実現するための、最も確実な道筋です。

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配偶者が適応障害になった場合の接し方

離婚協議の最中に、あるいはあなたの言動がきっかけで、配偶者が適応障害と診断された場合、その対応に戸惑うのは当然のことです。
しかし、離婚の話し合いをこれ以上こじらせず、円滑に進めるためにも、まずは病気への正しい理解と、相手の状況に配慮した冷静な対応が不可欠となります。

「どう接していいか分からない…」
「病気を理由に、話し合いが進まないのではないか」
そんな戸惑いや苛立ちを感じるかもしれません。
ですが、今の相手は心身ともに非常にデリケートで、傷つきやすい状態にあります。
あなたの不用意な一言が相手の症状を悪化させ、結果として離婚協議をさらに長期化させてしまう可能性もあるのです。

ここでは、配偶者が適応障害になった場合に心がけるべき、具体的な接し方について解説します。

まずは相手の状況を理解し、肯定する

何よりもまず大切なのは、相手が心身ともに辛い状況にあるという事実を、否定せずに受け止めることです。
たとえ離婚原因についてあなたに言い分があったとしても、「適応障害」という診断が出た以上、相手が苦しんでいることは紛れもない事実です。
その苦しみに耳を傾け、「辛かったね」と肯定する姿勢を見せることが、無用な対立を避け、冷静な話し合いへの第一歩となります。

適応障害の当事者は、「自分の気持ちの弱さが原因だ」「甘えているだけだ」と、強い自責の念に駆られていることが少なくありません。
そんな中で、最も身近な存在である配偶者から「気の持ちようだ」「病気のせいにするな」と突き放されてしまえば、絶望的な気持ちになり、心を固く閉ざしてしまいます。
まずは相手の話を聞くことに徹し、その苦痛を理解しようと努める。
その姿勢が、結果的にあなた自身の望む解決への近道にもなるのです。

「頑張れ」など、追い詰めてしまうNGな言葉

相手を励まそうとしてかけた言葉が、かえって相手を深く傷つけ、症状を悪化させてしまうことがあります。
特に、以下の言葉は相手を追い詰めてしまう可能性が高いため、使わないように細心の注意を払いましょう。

  • 「頑張れ」「しっかりしろ」
    適応障害の当事者は、すでにこれ以上ないほど心に無理を重ね、頑張った末に力尽きている状態です。そこで「頑張れ」と言われると、「まだ私の頑張りが足りないのか」と絶望的な気持ちにさせてしまいます。
  • 「気の持ちようだ」「甘えるな」
    これは、相手の苦しみを否定し、人格を非難する言葉です。病状への無理解を示す、最も言ってはならない言葉といえるでしょう。
  • 「いつ治るの?」
    回復を焦らせる言葉は、本人に大きなプレッシャーを与えます。病気の回復ペースは人それぞれです。
  • 「俺(私)の方がもっと大変だ」
    相手の苦しみを軽視し、自分の辛さと比較することは、相手の心を深く傷つけます。

代わりに、「ゆっくり休んでいいよ」「何か手伝えることはある?」など、相手の心身を労い、具体的なサポートを申し出る言葉をかけるよう心がけてください。

離婚協議中のサポートと適切な距離感

離婚の話し合いを進めるにあたっては、相手の体調に配慮したペース設定と、お互いが感情的にならないための「適切な距離感」が重要になります。
相手は集中力や思考力、判断力が低下している可能性があるため、重要な決断を急かしたり、長時間の話し合いを強いたりすることは避けるべきです。

  • 話し合いは短時間で区切る
    1回の話し合いは30分から1時間程度を目安とし、複数回に分けて進めるようにしましょう。
  • 事前に議題を伝える
    次に何を話し合うかを事前に伝えておくことで、相手も心の準備ができます。
  • 第三者を介する
    当事者同士では感情的な対立が避けられない場合、弁護士を代理人に立て、直接の接触を避けるのが最も賢明な方法です。弁護士が間に入ることで、感情的なぶつかり合いを避け、冷静かつ事務的に協議を進めることができます。

相手の病状を悪化させないことが、結果的に離婚協議をスムーズに進めることにつながる、という視点を持つことが大切です。

相手が治療を受けない場合の対応方法

相手が明らかに心身の不調をきたしているにもかかわらず、本人が「自分は病気ではない」と主張し、治療を頑なに拒否するケースもあります。
このような場合の対応は非常に難しく、根気が必要です。

本人の意思に反して、無理やり病院に連れて行くことはできません。
まずは、「あなたの体のことが心配だから」と、非難ではなく、心から心配しているというメッセージを伝え、受診を促し続けましょう。
一人での説得が難しい場合は、相手の親や兄弟など、相手が信頼している人に協力を求め、一緒に受診を勧めてもらうのも一つの手です。

それでも治療を拒否し続ける場合は、離婚協議を進める上で、相手の言動が病気の影響なのか、そうでないのかの判断が非常に難しくなります。
対応を誤ると、後々「病気で正常な判断ができない状態で、不利な条件に合意させられた」と主張されるリスクも考えられます。
このような場合は、速やかに弁護士に相談し、今後の進め方について専門的なアドバイスを受けるようにしてください。

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離婚と適応障害に関するよくある質問

離婚と適応障害の問題は、法律と医療という二つの専門分野が複雑に絡み合うため、多くの方がさまざまな疑問や不安を抱かれます。
「自分の場合はどうなるんだろう?」「相手の主張は本当?」など、インターネットで調べても、なかなか明確な答えが見つからないことも多いでしょう。

ここでは、離婚と適応障害に関して特によく寄せられる4つの質問について、専門家の視点から分かりやすくお答えします。

モラハラやDVが原因で発症した場合は?

配偶者からの精神的・肉体的な暴力(モラハラやDV)が直接の原因となって適応障害を発症した場合、それは離婚原因として認められ、かつ、慰謝料請求の有力な根拠となります

この場合、重要になるのは、①モラハラやDVがあったことを示す客観的な証拠(暴言の録音、怪我の写真、医師の診断書、第三者の証言など)と、②それらの行為が原因で適応障害になったことを示す医師の診断書、の両方を揃えることです。
これらの証拠を組み合わせることで、相手の行為の悪質性と、それによってあなたが受けた損害の大きさを具体的に証明でき、離婚や慰謝料請求を有利に進められる可能性が非常に高くなります。

家庭裁判所の調停ではどう説明すれば?

調停の場で、ご自身が適応障害であることを説明する際は、感情的に辛さを訴えるだけでなく、「医師の診断書」という客観的な証拠に基づいて、論理的かつ具体的に伝えることが重要です。

例えば、「夫の〇〇という言動が原因で、昨年の〇月頃から不眠と食欲不振が始まり、心療内科を受診したところ、適応障害と診断されました。現在も週に一度通院し、薬を服用しています」というように、

  • 原因:相手のどのような行為が原因か
  • 時期:いつから症状が始まったか
  • 診断:医師から何と診断されたか
  • 現状:現在の治療状況はどうなっているか

を、簡潔に、かつ事実として調停委員に伝えます。
これにより、調停委員はあなたの状況を客観的に理解し、相手に対してあなたの体調に配慮した進行を促したり、あなたの主張に説得力があると判断したりする助けとなります。

相手が適応障害だと主張してきたら?

離婚協議の最中に、相手が突然「あなたのせいで適応障害になった」と主張してきた場合、まずは冷静に受け止め、医師の診断書の提出を求めることが第一歩です。

相手の主張が事実であれば、無理な要求を突きつけたり、感情的に責め立てたりすることは、相手の病状を悪化させ、話し合いをさらにこじらせるだけです。
その場合は、相手の体調を考慮し、弁護士を介して冷静に協議を進める必要があります。
一方で、離婚を有利に進めるための口実として、虚偽の主張をしている可能性も残念ながらゼロではありません。
提出された診断書の内容(診断日、原因とされる事柄、症状の程度など)をよく確認し、ご自身の認識と大きな食い違いがある場合は、速やかに弁護士に相談し、今後の対応を慎重に検討しましょう。

治療費を相手に請求することは可能?

適応障害の治療にかかった費用を、相手に請求することは可能ですが、条件があります
それは、適応障害の原因が、相手の不法行為(DV、モラハラ、不貞行為など)にあると、法的に明確に立証できる場合です。

この場合、治療費は、相手の不法行為によって生じた「損害」の一部と見なされます。
請求するためには、①相手の不法行為を証明する客観的な証拠、②その行為と適応障害発症との因果関係を示す医師の診断書や意見書、そして③実際にかかった治療費の領収書、といった証拠を揃える必要があります。
慰謝料とは別に、損害賠償として請求することになりますが、因果関係の立証は簡単ではないため、必ず認められるとは限りません。
請求が可能かどうか、またその具体的な方法については、弁護士に相談し、専門的な判断を仰ぐことが不可欠です。

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まとめ:まず、あなたの心と体と権利を守る

この記事では、「離婚による適応障害の症状と法的影響」や「慰謝料請求の可否」、「具体的な対処法」などについて解説してきました。

離婚という大きなストレスの中で心身のバランスを崩すのは、決して特別なことではありません。
しかし、その辛さを我慢するだけでは、状況は好転しないのです。
まずは心の問題に専門医の助けを借り、同時に、それが離婚にどう影響するのか法的な知識を得ること。
この両面からのアプローチが、後悔のない解決への唯一の道と言えるでしょう。

今すぐ全てを解決しようと、焦る必要はありません。
まずは「専門家に相談する」という選択肢があることを知ってください。
その一歩が、状況を大きく変えるきっかけになります。

特に「適応障害を理由にした慰謝料請求」や「相手からの主張への対応」は、医学と法律の知識が複雑に絡み合うため、専門家のサポートが不可欠です。
私たち「home」には、離婚問題とメンタルヘルス、両方に詳しいカウンセラーや弁護士が在籍していますので、安心してご相談ください。

今は、心身の不調と法的な問題が重なり、未来を描くことすら難しいかもしれません。
しかし、あなたの辛さは「甘え」などでは決してない。
正しいケアと適切な対応を行えば、必ず心穏やかな日々を取り戻すことができます。

どうか、ご自身を責めないでください。
あなたが自分自身を大切にし、新しい人生へと踏み出すその勇気を、私たちは全力でサポートします。

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参考:全国自治体の養育費支援神奈川県の養育費支援

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