「口約束だけじゃ、将来ちゃんと払ってもらえるか不安…」
「公正証書がいいと聞いたけど、手続きが難しそうだし費用も心配…」
離婚に伴う養育費の取り決め。
お子さんの将来のためにも、養育費は確実に受け取りたい、あるいは支払い義務を明確にしておきたい、そう考えるのは当然のことです。
養育費の支払いは長期間にわたるため、残念ながら途中で支払いが滞るケースは少なくありません。厚生労働省の調査では、養育費の支払いを受けている母子家庭は3割以下というデータもあります。
だからこそ、強制執行力を持つ「公正証書」で約束を形に残すことが、お子さんとご自身の未来を守るための重要な備えとなるのです。しかし、知識がないまま進めると、記載内容に不備があったり、不利な条件になったりする可能性もあります。
不安や疑問を抱えたままにせず、まずは養育費公正証書について正しく理解し、作成に向けた具体的な一歩を踏み出しましょう。
この記事では、[養育費の公正証書作成を考えている方、またはその必要性について詳しく知りたい方]に向けて、主に以下を専門家視点で分かりやすくご説明します。
- 養育費公正証書のメリット・効力と作成すべき理由
- 失敗しないための作成手順・記載すべき内容・注意点
- 公正証書作成にかかる費用・補助金と専門家への相談について
養育費公正証書は、少し手間や費用がかかるかもしれませんが、将来にわたる安心を得るための大切な手続きです。
この記事が、あなたの疑問や不安を解消し、後悔のない選択をするための一助となれば幸いです。
ぜひ最後までお読みいただき、参考にしてください。


養育費の公正証書とは?作成メリットと法的効力
「口約束だけじゃ不安…、ちゃんと払ってもらえるか心配…」「もし支払われなくなったらどうしよう…」そうした切実な不安を抱えている方にとって、公正証書はとても心強い味方となってくれるでしょう。
離婚後、お子さんが健やかに成長していくために欠かせない「養育費」。
その大切な養育費の取り決めを、「公正証書」という法的に強い効力を持つ公的な文書で残しておくことは、将来にわたるお子さんの生活とご自身の安心を守るために、非常に重要な意味を持ちます。
口約束や当事者間だけで作成した簡単な合意書だけでは、残念ながら、後になって支払いが滞ってしまったり、約束の内容を巡ってトラブルになったりするケースが少なくありません。
このセクションでは、まず養育費と公正証書がそれぞれどういうものなのか基本を確認し、その上で、養育費の取り決めを公正証書にする具体的なメリットと、それによって得られる法的な効力について、詳しく解説していきます。
養育費とは?
養育費とは、子どもが経済的・社会的に自立するまでに必要となる費用のことを指します。
具体的には、日々の衣食住にかかる費用(生活費)、教育に関する費用(学費、塾代、習い事など)、医療費、そして適度なお小遣いなどが含まれます。
親は、たとえ離婚して親権を持たない側になったとしても、子どもに対して扶養義務を負い続けます。
これは、単なる道徳的な責任というだけでなく、法律で定められた義務です。


養育費を受け取れている母子家庭は30%以下
残念ながら、離婚時に養育費の取り決めをしたとしても、実際に継続して支払いを受けられている方は決して多くない、という厳しい現実があります。
生労働省が行った調査によると、その実態が浮き彫りになっています。
厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によれば、母子世帯のうち現在も養育費を受け取っていると回答したのはわずか28.1%に留まっています。
一方で、「養育費を受けたことがない」と回答した世帯が半数以上の56.9%にものぼるのです。
参考:厚生労働省「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」
このデータは、養育費の取り決めを単なる口約束や簡単な合意書で済ませてしまうことのリスクの高さを示唆しています。お子さんの将来のためにも、取り決め内容を法的に有効な形で残し、支払いを確実に履行させるための手段を講じておくことの重要です。


公正証書とは?
公正証書とは、全国各地にある「公証役場」において、公証人(こうしょうにん)という法律の専門家が、当事者(例えば、養育費の支払いについて合意した元夫婦など)からの依頼に基づいて作成する、公的な効力を持つ文書のことです。
公証人は、長年、裁判官や検察官、法務局長などを務めた法律実務経験者の中から法務大臣によって任命される、中立かつ公正な立場の公務員です。
その公証人が、当事者双方の意思を確認し、法律的な観点からも内容をチェックした上で作成するため、公正証書は非常に高い証明力と証拠能力が認められています。


養育費の公正証書を作成するメリット4つ
では、養育費の取り決めについて、わざわざ費用と手間をかけて公正証書を作成することには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
養育費の支払い確保という観点から、主に以下の4つの大きなメリットが挙げられます。
これらのメリットを理解することで、なぜ多くの場合に公正証書の作成が推奨されるのかがお分かりいただけるはずです。
1. 調停・審判・裁判などを経ずに、強制執行できる
公正証書を作成する際に、「債務者(支払う側)は、本証書記載の金銭債務(養育費の支払い)を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した」という趣旨の特別な文言(これを強制執行認諾文言といいます)を入れておくことで、その公正証書は、裁判所の確定判決や調停調書と同じ効力を持つ「債務名義」となります。
具体的には、相手方の給与や預貯金口座などを差し押さえて、そこから未払いの養育費を回収することができるのです。これにより、時間も費用もかかる裁判手続きを省略し、迅速かつ強力に権利を実現できる可能性が高まります。
2. 心理的なプレッシャーが強い
公正証書は、公証人という法律の専門家が関与して作成される公的な文書です。
そのため、当事者間で作成した私的な合意書(離婚協議書など)と比べて、その記載内容には法的な重みがあります。
公正証書で養育費の支払いについて約束したという事実は、支払い義務者(支払う側)に対して、「これは単なる口約束ではない、法的な拘束力のある正式な約束なのだ」という強い認識を与えます。
さらに、前述の強制執行認諾文言があれば、「もし支払わなければ、給与や財産を差し押さえられる可能性がある」というプレッシャーも感じることになります。
3. 法的文書になる
公正証書は、公証人が当事者双方の本人確認を行い、意思能力を確認した上で、合意内容が法律的に問題ないかなどをチェックして作成される、極めて証明力の高い公的な文書です。
当事者間で作成した合意書なども証拠にはなりますが、後日その有効性や内容について争われた場合、証明が難しくなるケースもあります。公正証書であれば、その心配はほとんどありません。約束の内容を明確な法的文書として確定させることができるのです。
4. 紛失・改ざんのリスクが低い
作成された公正証書の「原本」は、法律に基づき、原則として作成から20年間、その公正証書を作成した公証役場に厳重に保管されます。当事者には、その原本に基づいて作成された「正本」または「謄本」が交付されます。
これにより、万が一、ご自身が保管していた公正証書の正本や謄本を紛失してしまった場合でも、公証役場に申請すれば、再度謄本を発行してもらうことが可能です(手数料はかかります)。
また、原本が公証役場に保管されているということは、一方の当事者が後から勝手に内容を書き換えたり、破棄したりするといった改ざんや隠匿のリスクも極めて低いことを意味します。






養育費公正証書の作成|準備から完成までの全手順
養育費について公正証書を作成すると決めたら、次は具体的な手続きを進めていくことになります。
公正証書は公的な文書ですので、作成にはいくつかの段階を踏み、必要な準備を整える必要があります。
ここでは、養育費の公正証書を作成するための準備段階から、実際に公正証書が完成するまでの流れを、分かりやすく5つのステップに分けて解説していきます。
Step1:まずは養育費の内容について合意する
公正証書を作成するための、最も重要かつ最初のステップは、養育費に関する具体的な条件について、当事者双方(元夫と元妻)が完全に合意していることです。
公正証書は、あくまで「既に当事者間で合意が成立している内容」を公証人が文書にする手続きです。
公証人は、中立な立場で書類を作成する専門家であり、夫婦間の争いを仲裁したり、どちらか一方に有利な条件を提案したり、養育費の金額について交渉したりする役割ではありません。
したがって、公正証書を作成する前に、以下の点などについて、夫婦間でしっかりと話し合い、明確な合意を形成しておく必要があります。
- 養育費の月額
- 支払い期間(始期と終期)
- 支払い方法(振込口座など)
- 支払日が休日の場合の取り扱い
- 支払いが遅れた場合の遅延損害金
- 進学費用や医療費などの特別費用
- (必要であれば)面会交流の条件 など
もし、どうしても当事者間の話し合いで合意に至らない場合は、公正証書を作成する段階には進めません。その場合は、まず家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てるなど、別の方法で合意形成を目指すことになります。



Step2:作成に必要な書類を集める
養育費に関する合意ができたら、次に公正証書を作成するために必要な書類を準備します。
公証人が当事者の本人確認や合意内容の事実確認を正確に行い、法的に有効な公正証書を作成するために、いくつかの書類の提出が求められます。
一般的に必要となる主な書類は以下の通りですが、具体的な必要書類は、依頼する公証役場や公正証書に記載する内容によって異なる場合があります。
必ず事前に、依頼を予定している公証役場に必要な書類を確認してください。
- 当事者双方の本人確認書類:
- 個人の場合: 運転免許証+認印、パスポート+認印、マイナンバーカード+認印、印鑑登録証明書(発行後3か月以内)+実印 のいずれか。
- 法人の場合: 法人の登記事項証明書(発行後3か月以内)、代表者の印鑑証明書(発行後3か月以内)、代表者印など。
- 戸籍謄本: 夫婦関係や親子関係(子どもの氏名、生年月日など)を確認するために必要です。離婚後の場合は、離婚日が記載されているものを用意します。
- 収入に関する資料(年収を証明するもの): 源泉徴収票、課税証明書、確定申告書の控えなど。養育費の金額算定の根拠として、提出を求められる場合があります。
- 合意内容に関する資料
Step1でまとめた、養育費の取り決め内容を記載したメモや合意書など。必須ではありませんが、提出すると手続きが円滑に進みます。 - その他: 財産分与や慰謝料など、養育費以外の条件も公正証書に含める場合は、それに関連する資料(不動産の登記簿謄本、預金通帳のコピーなど)が必要になることがあります。



Step3:公証役場を探し、予約・相談する
養育費に関する合意がまとまり、必要書類の準備がある程度進んだら、実際に公正証書を作成してもらう公証役場を探し、予約と事前相談を行います。





Step4:公正証書の原案を作成・確認する
公証役場での作成日時の前に、通常は公証人が当事者間の合意内容に基づいて公正証書の「原案(案文)」を作成し、当事者がその内容を確認するというステップを踏みます。
これにより、作成当日にスムーズに手続きを進めることができます。



Step5:公証役場で作成、受け取りと保管方法
公正証書の原案の内容について当事者双方が完全に合意できたら、いよいよ最終段階、公証役場での作成手続きとなります。
- 作成当日
- 事前に予約した日時に、原則として当事者双方が公証役場に出頭します。体調不良などで本人が行けない場合は、委任状により代理人(弁護士など)が出頭することも可能です。
- 必要な持ち物(Step2で確認した本人確認書類、印鑑など)を忘れずに持参します。
- 公証人の面前で、作成する公正証書の最終的な内容について、公証人から読み聞かせや説明があります。
- 内容に間違いがないことを最終確認した後、当事者双方が公正証書に署名・捺印します。
- 最後に公証人が署名・押印し、公正証書が完成します。
- 費用の支払い
- 通常、この作成当日に、定められた計算方法に基づいた公証人手数料を現金で支払います。
- 受け取り
- 完成した公正証書は、原本は公証役場に保管され、当事者にはそれぞれ「正本」と「謄本」が交付されます。どちらが正本を受け取るかは事前に決めておくか、公証人に確認しましょう(通常、強制執行に使えるのは正本です)。
- 保管
- 受け取った公正証書の正本・謄本は、養育費の支払いが完了するまでの長期間、紛失したり汚損したりしないよう、安全な場所に大切に保管してください。将来、強制執行の手続きが必要になった場合に、この正本または謄本が必要となります。




公正証書に記載すべき養育費の取り決め内容と注意点
「どんなことを、どこまで具体的に書いておけばいいの?」「後で揉めないためには、どんな点に注意すればいい?」そうした疑問を持つのは当然です
養育費の公正証書をせっかく作成しても、その内容が曖昧だったり、重要な点が抜けていたりすると、いざという時に役に立たなかったり、かえって新たなトラブルの原因になったりする可能性があります。
将来にわたって効力を持ち、お子さんの生活を確実に支えるためには、記載する内容を具体的かつ明確に定めておくことが非常に重要です。
ここでは、養育費の公正証書を作成する際に、最低限記載すべき基本的な項目から、将来の状況変化も見据えて盛り込んでおくと安心な項目、そして記載する上での注意点について解説します。
養育費の「金額」と「支払期間」の定め方
公正証書に記載すべき最も基本的な項目は、「いくらを」「いつまで」支払うか、という点です。
ここが曖昧だと、公正証書を作成する意味が半減してしまいます。
これらの基本的な条件を明確に定めることが、公正証書の根幹となります。


「支払方法」と遅延した場合の取り決め
養育費の金額と期間が決まったら、次にそれを「どのように支払うか」という具体的な方法と、もし支払いが遅れた場合にどうするか、という点を定めておきます。これも、後々の無用なトラブルを防ぐために重要な項目です。
支払方法を具体的に特定し、遅延した場合のルールも明確にしておくことで、スムーズな支払いを促し、万が一のトラブルにも備えることができます。



進学費用・医療費など「特別費用」の分担
毎月定額で支払われる養育費には、通常、日常的な生活費や教育費、医療費が含まれます。
しかし、子どもが成長する過程では、高校や大学への進学に伴う入学金や授業料、あるいは大きな病気や怪我による高額な医療費など、月々の養育費だけでは賄いきれない、まとまった「特別費用」が必要となる場面が出てくる可能性があります。
以下のような形で基本的な合意事項を盛り込むことが考えられます。
どのような費用を「特別費用」として扱うか、そしてそれをどのように分担するか(折半か、収入割合かなど)を、できる限り具体的に話し合い、合意内容を公正証書に反映させておくことが、将来の不安を減らすために有効です。
面会交流の条件を含める場合のポイント
養育費の公正証書には、養育費に関する取り決めだけでなく、子どもと離れて暮らす親との「面会交流」に関する条件を一緒に盛り込むことも可能です。
面会交流は、子どもの健全な成長発達にとって非常に重要であると考えられており、養育費の支払いと並んで、離婚後の親子関係における大切な取り決め事項の一つです。
養育費と面会交流の条件を一つの公正証書にまとめておくことで、離婚後の親子に関する約束事を明確にし、双方の権利と義務を確認することができます。
ただし、記載する際にはいくつかのポイントがあります。






養育費公正証書作成にかかる費用と補助金制度
特に離婚後は経済的に不安定になりやすい状況もあり、「公正証書を作りたいけど、費用がどれくらいかかるのか心配…」「少しでも負担を軽くする方法はないのかな?」と感じている方も少なくないでしょう
公正証書の作成費用は「公証人手数料」として法律で定められていますが、その計算方法や相場を知っておくことは大切です。
また、費用負担をどうするか、そしてお住まいの自治体によっては利用できる補助金制度がある可能性も知っておきましょう。
ここでは、養育費公正証書を作成する際の具体的な費用とその計算方法、費用の負担割合、そして活用できるかもしれない補助金制度について解説していきます。
公証人手数料の計算方法と相場
養育費の公正証書を作成する際に公証役場へ支払う主な費用は、「公証人手数料」です。
この手数料は、国が定めた「公証人手数料令」という法令に基づいており、全国どの公証役場で作成しても基本的に同じ基準で計算されます。
例えば、月額5万円の養育費を10年間支払う場合、目的価額は 5万円 × 12ヶ月 × 10年 = 600万円 となります。日本公証人連合会のウェブサイトなどで公開されている手数料の基準表によると、目的価額が500万円を超え1000万円以下の場合は、手数料は17,000円となります。
これに加えて、公正証書の枚数に応じた手数料(通常1枚あたり250円)や、当事者に交付される正本・謄本の作成手数料(通常1枚あたり250円)などが加算されます。
これらの合計額が実際に支払う手数料となります。
養育費のみの取り決めであれば、一般的には総額で2万円~5万円程度が相場と言われますが、慰謝料や財産分与など他の条件も一緒に盛り込む場合は、その内容に応じて手数料は加算されます。
正確な費用を知りたい場合は、事前に合意内容のメモなどを持参し、公証役場に見積もりを出してもらうのが最も確実です。
費用は誰が負担する?折半は可能?
公正証書を作成するための費用(公証人手数料など)を、当事者のどちらが負担するかについては、法律で特に決まりはありません。
したがって、基本的には夫婦間の話し合いによって自由に決めることができます。
一般的には、以下のようなケースが多いようです。
- 夫婦で折半する
最も公平で、後々トラブルになりにくい方法として、双方が費用を半分ずつ負担するケースが多く見られます。 - 一方が全額負担する
双方の合意があれば、どちらか一方が全額を負担することも可能です。例えば、収入の多い側が負担する、あるいは公正証書の作成を強く希望した側が負担するといった場合です。 - 収入割合に応じて負担する
収入に大きな差がある場合に、収入の割合に応じて負担額を決めるという方法も考えられます。
重要なのは、費用負担についても、公正証書を作成する前に必ず当事者間で明確に合意しておくことです。
そして、その合意内容も、可能であれば公正証書の中に「本証書作成に関する費用は、各自2分の1の割合で負担する」や「本証書作成に関する費用は、全て〇〇(氏名)が負担する」といった形で記載しておくと、支払いを巡る後の紛争を防ぐことができます。
公証役場への実際の支払いは、作成当日にどちらか一方が代表して支払い、後で相手方に負担分を請求・精算するという形になることもありますので、その点も含めて事前に話し合っておきましょう。
自治体の「作成費用補助」制度の探し方
養育費の支払いを確実にすることは、子どもの健やかな成長にとって非常に重要です。
そのため、国や地方自治体も養育費の確保に向けた支援策を進めており、その一環として、一部の自治体では養育費に関する公正証書などの作成にかかる費用の一部を補助(助成)する制度を設けています。
この制度は、主にひとり親家庭などを対象とし、経済的な理由で公正証書の作成をためらうことがないように支援することを目的としています。費用負担がネックになっている方は、ぜひ一度、お住まいの自治体にこうした支援制度がないか調べてみることをお勧めします。






専門家(弁護士・行政書士)への相談は必要?
「専門家に頼むと費用がかかるし、自分たちだけでできないかな?」「弁護士と行政書士、どちらに相談すればいいの?」といった疑問や迷いを感じる方も多いでしょう。
専門家への依頼は必須ではありませんが、状況によっては大きなメリットがあります。
養育費の公正証書は、ご自身たち(元夫婦)だけで公証役場に行って作成することも可能です。
しかし、その内容が法的に有効で、かつ将来のトラブルを確実に防ぐものにするためには、弁護士や行政書士といった専門家のサポートを検討した方が良い場合もあります。
ここでは、弁護士と行政書士それぞれの役割と依頼するメリット・費用感、そしてご自身たちだけで公正証書を作成する場合の重要な注意点について解説し、状況に合った方法を選ぶための判断材料を提供します。
弁護士に依頼するメリットと費用
弁護士は、法律に関するあらゆる問題を取り扱うことができる専門家です。
養育費公正証書の作成に関して弁護士に依頼すると、以下のような幅広いサポートが期待できます。
弁護士に依頼する費用は、依頼する業務範囲によって大きく異なります。
一般的には、法律相談料(30分5千円~1万円程度)、依頼した場合の着手金(公正証書作成のみなら数万円~十数万円程度、交渉や調停も含む場合は数十万円~)、成功報酬(養育費総額の〇%など)で構成されます。
費用はかかりますが、特に相手との交渉が必要な場合や、法的に複雑な問題を抱えている場合には、依頼するメリットは大きいと言えるでしょう。
行政書士に依頼できる範囲と注意点
行政書士は、「街の法律家」とも呼ばれ、官公署に提出する書類や、権利義務・事実証明に関する書類作成の専門家です。養育費公正証書の作成に関して、行政書士には以下のサポートを依頼できます。
行政書士に依頼するメリットは、一般的に弁護士に依頼するよりも費用を抑えられる点です。
費用は数万円程度が目安ですが、これも依頼内容によります。
ただし、行政書士ができる業務範囲には重要な制限があります。
したがって、行政書士への依頼が適しているのは、「夫婦間で養育費の条件について円満に合意ができており、法的なアドバイスや交渉は不要だが、正式な書類(公正証書原案)の作成だけを専門家に任せたい」という場合です。
【テンプレート付】自分たちだけで公正証書を作成する場合
ご利用には十分ご注意ください。必ずご自身の状況に合わせ修正・追記し、記載漏れや不利な内容がないか確認しましょう。
なお、ここで示す情報は一般的な参考であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。テンプレートの利用により生じたいかなる損害についても責任を負いかねますので、ご了承ください。少しでも不安があれば弁護士等の専門家へ相談することを強く推奨します。
専門家に依頼せず、ご自身たち(元夫婦)だけで協力して養育費の公正証書を作成することも、もちろん可能です。費用を抑えられるというメリットがありますが、その分、記載内容に漏れや不備がないよう、細心の注意を払う必要があります。
ご自身たちで養育費の公正証書を作成する際に、最低限盛り込むべき重要事項のチェックリストと、特に注意すべき点を解説します。公証役場に相談する際にも、これらの点を整理しておくとスムーズです。
1. 養育費の支払額(月額)
「毎月●万円」のように、具体的な金額を必ず記載します。
金額の根拠(算定表など)は記載不要ですが、合意した金額を明確にします。
ボーナス払いがある場合は、支払月と金額も明記しましょう。
2. 支払日
「毎月●日限り」のように、支払日を特定します。
「月末」とする場合も多いです。
支払日が金融機関の休業日にあたる場合の取り扱い(前営業日か翌営業日か)も決めておくとより丁寧です。
3. 支払い開始時期
「令和●年●月から支払う」のように、支払いを開始する年月を明確に記載します。
4. 支払い終了時期
「子が満●歳に達する日の属する月まで」のように、支払いが終了する時期を具体的に定めます。
「成人まで」ではなく、具体的な年齢(例:20歳、22歳)で指定するのが望ましいです。
「大学卒業まで」とする場合は、「大学(または最終学歴として合意した学校)を卒業する日の属する月まで」などと記載します。
5. 支払い方法
銀行振込が一般的です。
「〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇 口座名義人〇〇」のように、振込先の口座情報を正確に記載します。
振込手数料をどちらが負担するかも明記しておきましょう。
6. 養育費決定後の事情変更の対応
必須ではありませんが、将来、支払う側や受け取る側の収入が大きく変動したり、子どもが高額な費用が必要になったりした場合に、養育費の金額を見直す可能性があることを確認する条項を入れることも検討できます。
「別途誠実に協議する」といった内容が多いですが、具体的な条件(例:収入が〇%増減した場合など)を定めることも可能です(ただし合意形成が難しくなる場合もあります)。
7. 強制執行認諾文言
これは公正証書にする上で最も重要な条項です。
「債務者(支払義務者)は、本証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した」という定型の文言を必ず入れてもらうように、公証人にお願いしてください。
この文言がないと、せっかく公正証書を作成しても強制執行ができなくなってしまいます。
清算条項に注意!
養育費だけでなく、離婚に伴う他の金銭問題(慰謝料や財産分与など)も全て解決済みである場合に、「本件離婚に関し、本書に定めるほか、何らの債権債務がないことを相互に確認する」といった清算条項を入れることがあります。
もし、養育費とは別にまだ解決していない金銭請求がある場合、この条項を入れるとその請求ができなくなる可能性があります。
清算条項を入れるかどうか、その文言については、公証人ともよく相談し、慎重に判断してください。




養育費公正証書に関するよくある質問
養育費の公正証書を作成しようと考えたとき、多くの方が共通して疑問に思う点や、誤解しやすい点があります。
手続きや効力について、「これはどうなんだろう?」と具体的な疑問が湧いてくるのは当然のことでしょう。
最後に、養育費公正証書に関して特によく寄せられるご質問とその回答をまとめました。
疑問点を解消し、安心して手続きを進めるための一助としてください。
Q. 相手が作成に協力してくれない場合は?
公正証書は、当事者双方の合意と協力(公証役場への出頭または委任状による代理出頭)があって初めて作成できるものです。したがって、相手方が作成を拒否したり、話し合いに応じなかったりする場合は、残念ながら公正証書を作成することはできません。
その場合の代替手段としては、家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立てることになります。
調停で話し合いがまとまれば、その合意内容を記載した「調停調書」が作成されます。
Q. 公正証書があれば100%回収できますか?
いいえ、残念ながら公正証書(強制執行認諾文言付き)があったとしても、養育費を100%確実に回収できるとは限りません。公正証書は、あくまで支払いが滞った場合に「強制執行(差し押さえ)を申し立てる権利」を保障するものです。
実際に強制執行を申し立てても、相手方に差し押さえるべき給与収入や預貯金、その他の財産が全く存在しない場合には、現実的に回収することは困難です。また、相手が勤務先を転々としたり、住所不明になったりすると、差し押さえの手続き自体が難しくなることもあります。
しかし、公正証書があることで、支払いがない場合に裁判を経ずに迅速に法的手段をとれるという点は、口約束や私文書にはない非常に大きなアドバンテージです。回収の可能性を格段に高める有効な手段であることは間違いありません。
Q. 作成後に内容を変更・更新できますか?
はい、可能です。
公正証書で養育費の取り決めをした後でも、例えば以下のような「事情の変更」があった場合には、その内容を変更することができます。
- 支払う側、または受け取る側の収入が大幅に増減した(失業、転職、再婚など)。
- 子どもが進学し、教育費が大幅に増加した。
- 子どもや親が大きな病気や怪我をした。
- 受け取る側が再婚し、子どもが再婚相手と養子縁組した。
変更するためには、まず当事者間で話し合い、変更内容について新たに合意する必要があります。
合意ができれば、その新しい合意内容で改めて公正証書を作成し直すのが最も確実です(変更契約公正証書)。もし当事者間の話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所に「養育費増額(または減額)請求調停」を申し立てて、変更を求めることになります。
Q. 強制執行の具体的な手続き方法は?
養育費の支払いが滞った場合に、強制執行認諾文言付きの公正証書(正本)に基づいて強制執行を行うには、相手方の住所地を管轄する地方裁判所に「債権差押命令申立」を行うのが一般的です(給与や預貯金を差し押さえる場合)。
申立てには、主に以下の書類などが必要となります。
手続きは専門的で複雑なため、多くの場合、弁護士に依頼して行われます。ご自身で行うことも可能ですが、事前に裁判所の書記官に相談したり、関連書籍で調べたりするなど、十分な準備が必要です。
Q. 養育費以外の離婚条件も一緒に記載可能?
はい、可能です。
養育費の取り決めだけでなく、離婚に伴って合意した他の条件、例えば、慰謝料、財産分与、年金分割、親権、面会交流などについても、一つの公正証書にまとめて記載することができます。
むしろ、離婚に関する全ての取り決め事項を一つの公正証書(一般的に「離婚給付等契約公正証書」というタイトルになります)にまとめて作成する方が、手続きが一度で済み効率的であり、後々の紛争を包括的に予防するという観点からも推奨されます。




まとめ:公正証書で、養育費の不安を安心へ
この記事で、「養育費公正証書の重要性やメリット」「具体的な作成手順と流れ」「費用や補助金、専門家への相談」などについて説明してきました。
養育費の取り決めを「公正証書」という法的に強い効力を持つ形で残すことは、お子さんの将来の生活を安定させ、ご自身の精神的な安心を得るために、非常に有効な手段です。
強制執行力という大きなメリットがある一方で、作成には費用や手間がかかり、相手との合意形成というハードルがあるのも事実でしょう。
手続きの複雑さや費用面で、作成をためらってしまうお気持ちもよく分かります。
しかし、お子さんの健やかな成長のためには、養育費の確保は不可欠な要素です。
この記事で得た知識をもとに、まずはご自身の状況を確認し、公正証書作成に向けて何が必要か、どのように進めるべきか、具体的な計画を立てることから始めてみませんか。
相手との話し合い、必要書類のリストアップ、公証役場の検索など、今できることはきっとあるはずです。
「相手との話し合いが難しい」「公正証書に記載すべき内容に漏れがないか不安」「複雑な手続きは専門家に任せたい」といったお悩みについては、弁護士や行政書士といった専門家へ相談することで、より迅速かつ確実に、そして安心して手続きを進めることが可能です。
私たち「home」のような相談プラットフォームもございますので、気軽に専門家の意見を聞いてみるのも良いでしょう。
養育費公正証書をきちんと作成しておくことで、将来の「支払われなかったらどうしよう」という不安は大きく軽減されます。
それは、お子さんのためだけでなく、新しい一歩を踏み出すあなた自身の心の安定にも繋がるはずです。
まずは、公証役場のウェブサイトを見てみる、お住まいの自治体の補助金制度を調べてみる、あるいは専門家の無料相談を利用してみるなど、具体的な第一歩を踏み出してみましょう。
あなたの、そしてお子さんの未来のための大切な手続きを、私達は心から応援しています。
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弁護士、行政書士、探偵、離婚・夫婦問題カウンセラーなどの、経験豊富で厳選された専門家があなたの悩みに寄り添います。
離婚の公正証書が作成できる

離婚に強い女性行政書士に相談しながら、離婚条件を公正証書にすることができます。
公正証書にすることで、慰謝料や財産分与、養育費などが守られない場合、強制執行(給与、預貯金などの財産を差し押さえ)がカンタンになります。
養育費の公正証書作成で数万円補助の可能性

養育費を取り決め、実際に受け取っているひとり親は、全体のわずか24.3%にとどまります。
この養育費未払い問題に、各自治体ではさまざまな支援制度が用意されています。
養育費に関する公正証書作成補助として、神奈川県は上限4万円、横浜市は上限3万円、川崎市は上限5万円などです(2025年4月時点)
参考:全国自治体の養育費支援、神奈川県の養育費支援


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